命の終わり

お命を頂戴したら、残さず骨の髄まで頂くのがその命に対する最低限の礼儀と心得ます。

存命が難しくなってしまった慈無仁意(JIMNY)さん。

彼の遺志を汲み、最後に臓器摘出手術を取り計らいました。

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彼の、車としての人生(車生)は、ここで幕を下ろします。

しかし、彼の志は臓器移植を待つ同志の一部となり、生き続けることになるのです。

心臓(エンジン)、血管(メインハーネス)、皮膚(外装パネル)、筋肉(サスペンション)、靴(タイヤ)

使える臓器(部品)は抜かりなく摘出(外し)しました。

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摘出手術後、霊柩車(積載車)にて火葬場(某解体屋さん)まで搬送いたしました。

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斎場では職員さん達によるちょっとした人だかりができました。

「こんなに何もかも摘出された仏さんは、見たことがねえ。」

と。

いや、正確には

「エンジンもなければミッションもない。ハーネスもなければバッテリーもないし、残るは鉄とシュレッターダストだけだ。こりゃ金にならんな。」

といたところでしょうか。

フォークリフトに吊られる彼を見届けてから、私は帰路についたのでした。

南無阿弥陀仏。