エンジンオーバーホールでお預かりしていたこちらのJA22ジムニー。
圧縮不良での入庫ですが、実はこの車、弊社でオーバーホールするのは2回目なんです。
前回はたしか走行6万キロ台で中央道で噴いてしまい、レッカー引き上げ。
弊社でフルオーバーホールさせて頂きました。
その時にバルブは対策品番の物に全数交換しました。
(ちなみに車輌のカスタム製作、販売はうちではありません。)
それから約5万キロ走行、エンジン不調により入庫。
圧縮を測定するとかなり低い。
分解してみると、エキゾーストバルブが溶解して痩せてしまっている状態。
K6Aのバルブ溶解はJA22に限らずJB23でも見られる症状ですが、
対策部品でありながらこの期間で溶けてしまったのは早すぎます。
燃焼温度が高すぎる、
異常燃焼 デトネーションやノッキングを起こしている可能性が大です。
その原因ですが、
点火時期が適切でない
燃調が薄い
などが考えられます。
エンジンを再オーバーホール後、原因究明していきます。
点火時期はエンジン始動、暖気後に規定値に調整します。
問題は燃調です。
空燃比計を設置し、状況を見ます。
普段、タービン交換やブーストアップする際の燃調セッティング用に使っている物ですが、
ノーマル車をモニタリングするのは初。
暖気終了後、アイドリング~アクセル半開くらいのパーシャル域では理想空燃比の14.7付近で落ち着いています。
安物オートゲージなので誤差が心配でしたが、この辺りの数値を見る限りそこまで狂っていないと思います。
O2センサーからの信号がしっかりフィードバックされています。
問題は高負荷、高回転時の数値。
一番濃くても12.8辺りまでにしかなりません。
これでは薄すぎです。
ターボ車は通常、エンジン保護の観点から全開、全負荷時の空燃比は11前後に設定されているはずです。
何故これほどまで薄いのか?
真っ先に疑ったのが、燃料ポンプ。
オーナーさんに伺ったところ、購入当時の走行距離は3万キロ台とのことで、
乗られていなかった期間が長いことが想像できます。
過去の経験で放置期間が長い車は燃料タンク内が錆びてしまい、
ポンプのストレーナーを詰まらせて吐出量が足りないという事例がありました。
ポンプとフィルターを交換して再度チェック。
ほとんど数値は変わりません。
ここで内燃機加工屋さん(レースメカニック経験あり)からの助言。
吸排気系で社外品が付いているなら、全てノーマルに戻してみるべき。
エアクリが変わるだけで空燃比はかなり変わる。
たしかに、現車は社外のエアクリーナーやパイプが付いています。
全てノーマルに戻して、再度試乗。
今度は高回転高負荷時の数値が11.5付近まで濃くなりました。
これはどういう事かと言いますと。
JA22の燃調は
プレッシャーセンサー信号
アクセル開度
O2センサー信号
によって演算、決定されます。
O2センサーがフィードバックしない領域(高負荷高回転時)は、
プレッシャーセンサーからの信号がメインになります。
エアクリーナーが社外品になり、吸気抵抗が減り吸入量が増えても
プレッシャーセンサー信号から演算した燃調で燃料噴射するだけなので、
結果的に吸気量の増減が反映されず、燃料が薄い、ということになってしまったのだと思います。
これがエアフロセンサー(吸入空気の流量を測定)制御の車であればまだ違ったかもしれません。
走行フィーリングは、社外からノーマルに戻して若干マイルドになったような気がします。
ターボ車の空燃比はNAと比べて濃いものとなってますが、
これはNAよりも高温になりやすいので、エンジン保護の観点から理想よりも濃くなっているのです。
若干薄目くらいが一番パワーは出るのですが、それはつまりエンジンブローする危険と隣り合わせということです。
エアクリ換えて走りが良くなった!などと喜んではいけません。
純正部品はメーカーが膨大な時間と費用を掛けて研究開発した物です。
そのコストはアフターパーツメーカーの比ではありません。
一見無駄と思われる純正エアクリーナーBOXの容量も、
実は綿密に計算してはじき出された結果なのです。
エアクリーナーを販売されているメーカーも、ここまで燃調が変わるとは把握していないのではないでしょうか。
こういったエアクリはブーストアップやターボを大きくして、吸入空気量がノーマルでは足りなくなった時に初めて真価を発揮するものであり、
ノーマル燃調でエアクリだけ変えるのはエンジンの寿命を縮めるデチューンでしかありません。
これは別の車輌ですが、ブローオフバルブを外してしまい、メクラ蓋が装着されています。
このメーカーのサイトには、
ブローオフバルブは主としてスロットル閉時の吹き返し音を低減する目的としている。取り外しても機能上は問題ない。
と書かれていますが、実際にはブローオフバルブの第一目的はタービンの保護です。
市販されているターボ車に100%装着されているブローオフバルブ、しっかりとした意味があるのです。
音低減くらいの理由でわざわざメーカーがコストを掛けて装着しません。
たしかにレースカーはブースト漏れや故障を嫌い装着しませんが、タービンが1レースもてばよいのです。
ストリートカーでは長期的に見て、必ずタービンを痛めます。
他にも、ラテラルロッドの補正を下げるか上げるかなど、
ジムニー用パーツは誤った認識で製品化されている物が非常に多いです。
ユーザーさんは良し悪しの判断がなかなか難しいと思いますが、
私共も今回のことは良い勉強になりました。
自動車の技術は日々進化してますので、我々も置いていかれぬようしっかり勉強していきたいと思います。
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